何であんな畜生に。 何であんな畜生に。
初めは仔犬懐かれたようで嬉しかった。 俺の話を興味深げに良く聞いた。 整った美しい顔がくるくると表情を変える。 あぁ、可愛いなと思うと、自然と笑っている自分がいた。
「ハセは自分の顔が嫌いなのか」
「そうだな。俺もコモンのようにきれいな顔ならよかった」
愛らしい、無垢な筈のコモンの顔が、このとき確かに狡猾そうに笑ったのをどうして俺は見逃していたのだろうか。
「じゃあ、ハセも俺と同じ顔になればいいよ」
確かにあいつの顔は理想だった。 何度も羨ましいと感じていた。 そして同時に嫉妬もあった。 元は人間ではないあいつがあんなにも美しく、どうして俺がこんな風なのか。
しかしあまりにも無邪気なコモンの態度に、俺は不覚にも気を許してしまった。
何であんな畜生に。
コモンは、それから俺を見る度、それまでとは違う笑顔を見せた。 それは優位に立ったものの、余裕のある笑みだった。 ペットのように俺に懐いたコモンを、あぁ、可愛いなと思ったときに自然と俺が浮かべていた、あの笑みだった。
背筋がぞっとした。 どうしてこんなに気付くのが遅かったのだ。
それから下水道に近づくのは止めた。 あいつ等に、コモンに関わるとロクなことにならない。
案内屋に倒された後、散り散りになった意識の断片にどこか解放されたという思いがあった。 心のどこかでコモンに怯えていたのかも知れない。 薄れていく意識に終わっていくということを受け入れた。
「おはよう、ハセ」
終わった筈の魂が呼び戻された。 目の前にはコモンがいる。 あぁ、そうか。 これは悪夢か。
結局、この世で起こっている出来事なんて全て悪夢なのだ。 どんなに幸せなひとときでも、俺たちの背後にはいつも悪夢が口を開けて待っている。
あぁ、コモン。 お前の後ろにも悪夢は待っているよ。
060225 ハセとコモンの過去とか勝手に考えてみた。 わけわからんものを書いてしまってすみません。 |