「なぁ、ハセ。ハセはペットを飼ったことがある?」
コモンは冷たい笑顔で言った。
「猫を」
「猫をいちどだけ」
笑顔を作るのも面倒だと言ったようにコモンは無表情になる。 何も期待してなんていなかったくせに。
「死ぬところを見た?」
「見てない」
「どうして」
生前ハセの飼っていた猫は大人しい猫だった。 ハセの家にやってきて2年ほどたって病気になった。
「どこかへ行ってしまったんだ」
ボロボロの体で、一体どこへ行ったというのだろう。 猫は死ぬとき姿を消すの。 誰かが言っていた。
「人間はさ」
「人間はいずれ死ぬと知っているのに、死ぬところを見なければいけないのに、どうして動物を飼うんだろうな」
「知らないところで死ぬのなら心が痛まないのに」と言いながら、コモンは立ち上がった。
「でも俺は見たかったよ」
「何を」
「死ぬところ」
「なんで」
「愛してたからさ」
愛していたから、君の最期が見たかったんだ。 死にゆく姿は醜いから見られたくないと君は思うかも知れない。 けれど、君の最期を見ていたいんだ。 愛した君がここにいたことを忘れないように。 きゅっと、手を握って。
060327 あれ?またコモハセ?ハセ→コモ? とりあえずハセとコモンがこんな風に話し合うことはないだろうな。 |