無料-
出会い-
花-
キャッシング
だって、ルーピン先生は悲しいくらいに大人だったんですもの。
踊り場で踊ったことなんて、
あるわけ無いじゃない。
ルーピン先生のどこら辺が大人だったって。
そら、もう、いい年こいたオッサンに、何を今更って。
私がいってるのは、そういうことじゃないのさ。
内面の話?ってやつ?
つまり、だって、あの人の人生、私なんかの考えなど及ばないくらいのきっと、それ。
ああ、だけど、本当はそんな人生なくたって、ある程度は大人になるべきなのだけど。
「おや??こんなところでどうしたんだい?」
階段の踊り場にぺたりと座り込んでる私を見て、リーマス・J・ルーピン先生は、いつもと同じ柔らかい笑顔で問い掛けた。
この階段の踊り場には、大きな鏡があって、そもそも、踊り場がある時点であれなのだけれど、何だかホグワーツじゃないみたいに思えるんだ。
「?授業はないのかい?何で、こんなところに……」
ルーピン先生は言い掛けて止めた。全く反応を見せない私を見てのことだ。
「こんなこと、本当は先生が言っては駄目なんだろうけど、わたしにもあったからね。そういうこと」
ああ、先生、そういう風に子供の気持ちを汲んでは駄目だよ。貴方は大人になりすぎる。
ルーピン先生はにこにこ笑って、私を挟んで鏡の向かいの階段の、一番上の段に座った。
「体柔らかいんだね。バレエでもやっていたの?」
私は外側に曲げた足を床にぺったりとつけて座っていた。
これくらい、普通はできるものじゃない?
ああ。
「先生。私、踊り場で踊っている人なんて見たこと無いわ」
「ああ、それは、わたしも」
そういえば、何で『踊り場』なんだろうねぇ。と先生は微笑んだ。
私はゆっくりと立ち上がって、右足を後ろに伸ばして、体を倒した姿勢で止まった。
パチパチと手を叩く音がする。
「バレエなんてやったことないわ」
「なかなか様になっているよ」
ああ、先生。私ひとり、馬鹿な子供の様。
「先生も、どうか、そこから降りてきて、踊ってくださればいいのに」
まるで、馬鹿な子供の様に。
「本当は人生なんて、ずっと踊り場で踊っているようなものなのでしょうに」
-----------------------------
<2004.6.21>
[PR]動画