それは、必然の。
それは、ただの好奇心。
まるでサイエンス・フィクション覚醒の兆し。
魔法薬学の授業は、みんな、詰まらないというけれど、あれほど私の興味を誘うものは無い。
切り刻まれたヤモリの尻尾。
大鍋から沸き立つ、些かの不安を含んだ紫の蒸気。
そして、始終不愉快そうな顔をした黒い魔法使い。
全てが嵐の前の様にかしこまって、息を潜めたあの空気を、彼は全身で受け止めて、ビリビリと己を奮わせる。
不穏な何かが髪を梳く。
神聖な儀式の最中にあるような錯覚。
左手に持った三角フラスコは、いわば始まりを告げる雷鳴。
「それで、ミス・?貴様は何度言ったら、我輩の示した通りの実験をしてくれるのだ?」
いつもの1.5倍(当社比)(笑)は眉間の皺を深くしたセブルス・スネイプ教授が私を問い詰める。
毎度、お騒がせしております。
新時代の始まりを告げる筈の雷鳴は、悪夢のような大爆発を起こして終わった。
「筆記試験ではあれほどの成績を残すことができるのだ。実験を成功させるくらい、貴様なら赤子の手を捻るより簡単な筈だろう。違うか?ミス・?」
「プロフェッサー、理論上では、あの状態の薬品に過酸化水素を混ぜたら、即効性の脱色剤が出来る筈だったんです!理論上では!!」
「今は、我輩の手本通りに実験をする時間だ!それくらいは解るだろう!?」
「プロフェッサー!結果の見えている実験をすることに、一体、何の意味があるというのですか!?実験とは本来、未だ見ぬ結果を導き出すものでしょう!?」
「つまり、貴様は……」
「好奇心故の行動ですね」
それは、人類にとっては必然の一歩。
それは、ただの好奇心。
サイエンス・フィクションの成れの果ては未来の現実。
そう、それは、覚醒の兆し。
「ふん!授業はあくまで授業だ!そういう類の実験がしたいのなら、いくらでも残ってすればいいであろう!実験室の使用許可なら、我輩がいくらでも出してやる!!」
無理矢理に奮い立つ好奇心を押し殺したその顔は苦笑い。
それは、ただの好奇心。
苦笑いの成れの果ては貴方に見よう。
そう、それは、覚醒の兆し。
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ぼくらは愉快な実験仲間。
それは、恋心の覚醒の兆し。
<2004.6.22>
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