習作・青春エキストラ::::::::::お終いの空 ねぇ、私、本当は何も知らないの。 何も、何も。 あなたが笑う理由も、瞳の奥の翳りの訳も。 あなたが何に囚われているのかとか、あるいは、何者にも囚われていないのだとか。 何も知らないくせに、笑う度、叱るみたいに、責めるみたいに、私が投げ掛けた視線を、あなたは疎ましく思ったでしょうか。 思ったでしょうか。 「先生」 雑踏の中、揺れる鳶色の髪に思わずそう呼んだ。 「先生!ルーピン先生!!」 あなたは迷いながら足を止めて振り返った。 呼び止めたのに 私の口からは何も言葉が出てこなかった。 先生は私の顔を見て笑った。 その笑顔に、叱られているような、責められているような、許されているような 妙な気分です。先生。 「大好きです」って言えなかった。 「大好きでした」って言えなかった。 何て言えば良かったんだろう。 あなたの笑顔は暮れてゆく日のようです。先生。
<2007.02.10>