TYPE-L 01.その感情の名前 感情というのは厄介なもので、脳の働きによると解っているにも関わらずそれは、余りにも心に酷似する。 もしも、この左胸に矢を突き立てたとして、そこに心があるのならばどれほど楽だっただろうか。 この感情を想いを。 心とは何なのだろう。 あなたの動きひとつひとつ、あなたの言葉ひとつひとつに揺れる、この感情は。 心揺られ、心を痛め、心の底からあなたを想う。 自分の脳がどう働いてこうなるのか。 見当など幾らつけてもた所で、何一つ変わらない。 「?」 「……っ!??ルーピン先生!?」 「ああ、よかった。ずっと下を向いているから、具合でも悪いのかと思ったんだよ」 気付けば目の前に鳶色の髪。 白髪混じりのそれが揺れる様子も、心配そうに覗き込む優しい瞳も、私の名前を呼ぶ声も。 それら、あなたにまつわる全てに、私の脳は過敏に反応して、余りにも心に酷似したそれを産み落とす。 「。もう、授業は終わってるんだよ?調子が悪いなら言ってくれて構わないからね」 その感情の名前は。 恋しさも、切なさも通り越して、あなたを思えば涙が出るような。 笑ってしまうような。 「あなたがすきよ。」 左胸は早鐘のように。 ---------------------------- <2004.7.8>