TYPE-L 03.たった一つの真実 世界には事実と現実が溢れていたけど、真実なんて今まで一つも見たことなかった。 「知ってます?ルーピン先生」 「なにをだい、?」 「月は地球からできたのですよ」 「面白いことをいうんだね、は」 嫌そうな顔で笑いながら、ルーピン先生はちょっとバカにしたように言った。 「この学校の人は知らないかもしれませんが、これは紛れも無い事実なんですよ、先生」 「まだ地球に生物が生まれる前、もっともっと昔、地球がこの宇宙にできたばかりの頃。やわらかかった地球に隕石がぶつかって、欠片は宇宙に弾け飛んで」 聞いていないというように、そっぽを向いてココアを飲んでいる姿。 聞いていないんじゃない。 聞きたくないんだ、あなたは。 先生は。 でも。 「弾け飛んだ欠片は星になって、今も、地球の周りをぐるぐる回ってるんです」 止めない。 「月は地球の欠片なんですよ」 どんなに、あなたが嫌おうと。 「…………」 「……マグルの世界では、そういうことになってます」 温かいココアは美味しくて、伏せた瞼は美しくて。 どれだけの現実や事実がそこにあっても、それはいつもあやふやで移ろいやすくて。 それなのに、いつだって僕らはそれに振り回される。 信じたいものは数限りなくあるのに。 あなたが幸せであれる世界なら、それだけで、信じられるのに。 先生は、いつまでたっても頷いてくれなかった。 結局、たった一つの真実さえも、この世界では見つかりやしない。 ---------------------------- <2004.7.26>