TYPE-L 05.繋いだ手 とても憂鬱な気持ちで、一人になりたくて、寒い冬の日、僕は外へ出た。 灰色の空の下、目的も無くぼんやりと歩いていると、冷たいものが頬にあたった。 見上げると真っ白な雪がふわりと僕を包んだ。 今年、最初の雪だった。 僕は急に君に会いたくなって、この雪を君に見せたくなって、急いで、君がいるであろう談話室に向かった。 「」 談話室に着くと、君は暖炉の前で本を読んでいた。 僕が声を掛けると、本から顔を上げてこちらを見た。 「に見せたいものがあるんだ。もし良かったら、外へ出ないかな?」 誰よりも早く、君にあの雪を見せたくて、雪を見た君の顔を思って、頬が緩むのを抑えられなかった。 君は答えて、僕は君を連れて外へ出た。 君は感嘆の声を上げて、初雪だと楽しそうに笑った。 僕はそれがとても嬉しくて、笑った。 「ありがとう。リーマス」 君がそう言って微笑んで、僕は君のことが愛しくてたまらなかった。 「ねぇ、。手を、繋いでもいいかな?」 どうしても、君に触れたくて、どきどきしながら言うと、君は「うん」と頷いて、僕の方へちいさな手を差し出した。 真っ白な雪が舞い落ちる中、灰色の空の下を、僕らは手を繋いで歩いた。 辺りは静かで、繋いだ手はとても暖かくて、僕は上手く話しができなかった。 雪が世界を覆っていくのを見ながら、ゆっくりと僕らは歩いた。 途中、君が、「嫌いになったら、すぐに言って」と呟いた。 僕は「うん。も」と答えたけれど、きっと、君が僕のことを嫌いになっても、僕はずっと君のことが好きなんだろうと思った。 見渡す限り、世界が真っ白になると、それに気付いた生徒たちが、威勢良く外へ飛び出してきた。 皆、雪合戦を始めたり、雪だるまを作ったりして、思い思いに遊んでいた。 白い息を吐きながら、シリウスが手を振っていた。 「リーマス。シリウスが手を振ってる」 「うん」 僕らは繋いだ手とは逆の手で、駆け寄ってくるシリウスに手を振り返した。 「リーマス。知ってたなら、誘ってくれよ!なぁ、雪合戦やろうぜ」 シリウスが、僕の腕を掴んで走り出した。 君は繋いだ手を離して、にっこりわらって「いってらっしゃい」と手を振った。 僕も君に手を振ると、風を切るその手があまりにも冷たくて、なんだかとても、淋しかった。 君は僕を好きだと言ってくれたけれど、その気持ちは、繋いだ手の温かさほど確かじゃなくて。 キスをしたり、抱き合ったり、目に見える確かさが欲しいと、そのとき初めて思った。 雪合戦のために作った雪玉は、丸く形作ってすぐに、強く握り締め過ぎて崩れてしまった。 あのとき、繋いだ手を離さなければと。 ---------------------------- <2004.8.14> 前のお題を書き終わった後、このお題とかぶっていることに気付いて、かなり悩んだ。 結局、ノリで前のお題をリーマス視点で。 叶わないから願ってしまうんだと。