楽しかった思い出と再会と、何もかもを覆したそれを。 悲しむことも、怒ることもできずに。 地球は回る。何も変わらず。 シュガーレス→03 「それで?」 ルーピンの言ったことに驚いていたにも関わらず、口から出た言葉は以外にも冷静に響いた。 「君はこの本で、この仮説を立証するための実験ができないと書いているだろう?」 ルーピンはあまりにも落ち着いた私の態度に驚いたように、一瞬目を丸くして、それからにっこり笑った。 「僕が実験台になろうと思ってね」 「……所長の許可は?」 「が良いなら、好きなようにと」 血が冷えるのを感じた。 馬鹿馬鹿しいとは思いながらも、確実にそれを望んでいた。 何が変わってしまったんだろう? たった十数年。 私を取り巻く環境か。 あの人が死んで、ポッターもエヴァンスもペティグリューも死んで。ブラックはアズカバンへ。 幼い私が憧れた、輝かしい懐かしい日々が消えて。 変わってしまったのは私の方なのだろうか。 恋した人ですら、興味の対象にできるなんて。 もう少し取り乱して、涙でも流せば可愛いものを。 「……いつから?いつから人狼に?」 「もう、ずっと昔だよ。僕がホグワーツに入学するより前さ」 黙っててごめんと、ルーピンは呟いた。 「馬鹿馬鹿しいと思わない?わざわざ自分から実験台になろうだなんて」 「でも、動かなきゃ、何も変わらないよ?」 「つらい思いをするのは、あなただ」 私は、いつも思ってたんだ。 君がつらい思いをしていなければいいと。 何が変わった? ルーピンが人狼になったのはもっとずっと昔で。 何も変わってなんかいない? 君がつらい思いをしていなければいい。 いつもそう思うんだ。 そう、今も。 今も変わらず、そう思うのは。 「このまま、自分が人狼であることを呪って生きるほうが、よほどつらいと思わないかい?」 君がつらい思いをしているのなら、私が君を救いたい。 何も変わっていないのなら、変えてみたい。 結果、何一つ変わらなくても。 地球はどうせ、回り続けるんだろうから。 懐かしい日々が戻らないのなら。 「ミスター・ルーピン。まずは、お話しを聞きましょう」 何も変わらないかも知れないけれど。 「やってみる価値はあるみたいだね」 ルーピンはあの頃と変わらずに、にっこりと笑う。 君が幸せになるのなら、なんだって変えてみせよう。 何が変わっても、何も変わらなくても、地球は回るのでしょうから。 なんかさ…!なんか!!夢じゃないよ!! <2004.7.4>