私の 知っている人が 死んだ。
MEMENTO MORI
外はいい天気だ。
大石は縁側に腰掛けて、刀の手入れをしていた。
長い髪が微かに揺れる。
「さん、何か用?」
「気にしないで、詰まらないことだから。作業を続けてちょうだい。それが終わったら話すから」
きらりと刃が太陽に光る。
大石は満足げににやりと笑う。それはとても嬉しそうに。
「それで」
刀を陽にかざし、角度を変えて、きらりと光る様を何度も見ながら大石が言う。
「その銃はどうしたの?」
障子の向こう側で、息を呑む。
仕方の無いことかもしれない。
大石が刀を鞘に納めていないことは知っていたけれど、私はゆっくりと立って、縁側へ出た。
「仇討ちのつもり?」
「そうだね」
両手でしっかり銃を支える。
大石は動こうとしない。
この指が、引き金を引けば、一瞬で、何の痛みも、苦しみも、感じることなく、私は、あなたを、殺せるのに。
引き金に人差し指をかける。
何か、ざらりとした感触があった。
「やっぱり、やめた」
私の言葉に大石は笑う。
「残念」
「私が殺さなくても、いずれ死ぬでしょ?」
引き金に彫られた小さなちいさな文字を見る。
≪MEMENTO MORI≫
「西洋かぶれもいいとこね」
穏やかで静かな空の下。
銃声はあまりにも無粋だろう。
何も急ぐことはない。
君を忘れ行く日々も、思い出して涙する日々も。
越えてゆければ私にも。
メメント・モリ【memento mori (ラテン語)】
死を思え。死を忘れるな。
<2005.02.10>
鈴花ちゃんのキャラがつかめない……。
そして、誰夢なのかもわからない。
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