あまりにも真っ直ぐ過ぎるあなたの刀を、もう戻せないくらいにぐにゃぐにゃに出来たら最高だって、ずっと思ってたの。
『シンプル』と『単純』じゃあ、ニュアンスが違う。
どこからお金が出てきてるのか。
ついこの間もこうして宴会をしていたじゃない。
なんだか無性に腹が立った。
それと同時に、この世の全ては等しくシンプルなんだと感じた。
「、お前も飲め!」
楽しまなくては損だろうか。
成り行きに身を任せるのは愚かなことだろうか。
原田さんにお酌をされる。
いつもは受け取らないそれを快く受け取って、飲み干す。
悪くは無い。
愚かだろうとなんだろうと、構いはしない。
「あ、大石さん!」
宴会場から大石が出て行こうとしているところを引き止める。
足首を掴まれて、あからさまに睨みつけてくる。
ああ、なんてこの人は単純なんだ。
「大石さん、帰るんですかー?私も連れてって下さいよー」
ははは、と笑う。
ああ、楽しいな。
大石は少し考えて笑うと手を差し伸べる。
外は小雨が降っていた。
傘も差さずに、ふらふらと大石の後ろを付いて歩く。
大石の傘で遮られた提灯の灯りが丸くなって、きれいだなぁと思う。
ひゅっと、空を切る音がして、灯りが視界から消えた。
私は刀を抜いて、地面に落ちた提灯と傘を見た。
「なんだ、酔ってたんじゃないの」
「さぁ、どうでしょうかね」
大石が笑って、刀を鞘へ納める。
「あんたも、平和の為に刀をとったの?」
「みんながみんな、正しいことの為に戦ってると思ったら、大間違いですよ。やっぱり、すごく単純じゃないですか」
なんだか大石が、音もなく顔にも出さず笑ったような気がした。
「ちなみに、私は大切な人の為ですよ。照姫さまや容保さまは私を見捨てないで下さったから」
「それも、同じ、偽善だろ?」
「そうでうね。ただの自己満足ですよ。この国の行く末なんてどうだっていいんです。彼らが正しくても間違っていようとも、私が彼らを見捨てたくないだけで」
世の中はシンプルだ。
でも、それでいいと思う。
難しいことは、どうこねくり回したって、最終的に難しいものなのだ。
だから、シンプルでいい。
私は。
「あ」
「あ?」
「吐きそう」
気付くと、ゲロまみれの大石が、私を負ぶって屯所への道を歩いていた。
「一応、人の子ですか、大石さん」
「人の親切は黙って受け取るべきなんじゃないの?」
「そうですねぇ。あ、大石さん、あれ不逞浪士じゃないですか?どうです、気晴らしに2,3人!」
「酔ってるんだ。ていうか、誰のせいだと思ってるの」
酔ってました。
ふわふわして、なにもかもがどうでも良くなって。
「大石さん、どうでも良くなるって、すごくシンプルでいいですね!」
「何、『シンプル』って」
「刀がぐにゃぐにゃでも戦い続けれるってことですよ!」
「意味わかんねー」
書いた本人にも意味わかんねー。
<2005.2.17>
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