こんなにも重いものだと、初めから知っていたのなら、母親の腹の中にでも置いてくるのだったと、何度も後悔した。
zeroichi:;bokuha tada,
走っても走っても何かに追われているような感じがして、足を止めることができない。
止めることは出来ないのに、ドクドクと血を流す足は確実に止まろうとする。
気持ちばかりが先へと急いて、混濁した意識の中での一筋の光明は君だった。
どうして、君なのかは分からない。
ただ、生へと向かう本能の影からその笑顔がちらつく。
そこまで辿り着いたのなら、君と話しができるんだと思うと、何が何でも走らなければならない気がした。
どうしてなんだろう。
急に足元から地面が消えて、がくりと体が揺れた。
雑木林を抜けた崖から、自分の体が転げ落ちていく一瞬一瞬が、あまりにも鮮明に確実に脳裏に焼きついた。
そこに感情なんてものは微塵も無い。
気が付くと、崖の下。
体中がギシギシと痛んで動けなかった。
辺りに人の気配は無い。
もはや、ここは戦場ではないのだろう。
右手に持った刀が折れていた。
もう、こんなものは何の役にも立たないだろう。
刀を捨てて、それでも君に会わなければならないと思った。
なんとか崖を這い上がろうと、闇雲に手を伸ばしてみるが、銃弾の埋め込まれたままの足は言うことをきかない。
痛くて痛くて、涙が溢れた。
「くっそっ……」
本当はこんな風に、生にしがみ付いたりなんかしたくなかった。
見っとも無い。
しがみ付いたり、縋ったり、執着するのは醜いじゃないか。
「……。 」
君さえいなければ、快楽の渦の中、美しく散れたのに。
君を好きにならなければ、
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050226 |