自分でも、こんなの可笑しいって解ってる。
君は僕の太陽だ。
そう、何気ない感じで暖簾をくぐる。
ふわりと甘い匂いが鼻をつく。
「いらっしゃいませー」と明るく元気な声がする。
一体、どういう弾みでか、桜庭に連れられて一度この店に来たことがあった。
甘いものは苦手だと言い出せずに席に着いた。
「何にしはります?」
あのときと同じ声が聞こえて、顔を上げた。
盆を抱えて微笑む君の姿。
「ところてんを」
確かに、器量良しとは言えないかもしれない。
けれども忙しなく動き回る姿は見ていていとおしくなってくる。
そして、絶やすことのないその笑顔は、まるで太陽のよう。
その笑顔が見たくて。
甘いものなんて大嫌いだけれど。
「はい、お待ちどうさま」
コトリと机に置かれたところてんに我が目を疑う。
「……黒蜜?」
ところてんに黒蜜。
恐るべし京都。
俺は意を決して箸を手にする。
手に汗をかいているのが分かる。
ところてんに黒蜜。
恐るべし京都。
もう、それならそれでいい。
君の笑顔は今日もまるで太陽のよう。
きっと明日も明後日も、俺は黒蜜のかかったところてんを食べに来るんだろう。
<2005.03.15>
斉藤さん?
すみません、ふざけすぎました。
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