嫌いな季節は春。
言い放つ彼女の顔は無表情。
窓から入るのは穏やかな風。
窓の外には薄紅の桜。
そうだ。
夏になったら、
ひらりひらり。
舞い散る様は美しく、彼女はまた溜め息を吐いて、ごろりと寝転がる。
畳に広がる黒髪の描く流れに静かにふれると、急に風が強く吹いた。
渦を巻く薄紅。
舞い上がる黒い曲線。
また。
「げに……まっこと……」
なんと美しいことだろう。
我を、忘れそうになるのは、きっと仕方のないこと。
「」
「才谷さん、痛い」
抱きしめると背中の傷にそっとふれる。
「、綺麗じゃ」
「痛いよ」
春が嫌いだというなら、それでも良い。
夏になったら、きっと傷も癒える。
そしたら、
「祭りにでも行こうや」
「才谷さん」
「生きちょって良かった」
畳に広がる黒髪に桜の花びらがよく映える。
「夏らぁてすっと来るき」
<2005.04.16>
『春よ、』の続きのつもりですが。
本当は別の内容で、その後どうしたかとか、才谷との関係とか具体的に書くつもりだったのですが、まぁ、そっちは、またどこかで流用しようかと。
相変わらず土佐弁わかんねぇ。
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