あなたの目には、世界はどんなふうに映るのでしょう?
ザ・ビューティフル ワールド
嗚呼、世界はなんて美しいのでしょう!!
例え、不況だろうとテストだろうと。比呂士くんがいればそれだけで、私の世界はバラ色なのです。
そんな私は比呂士くんに会う為だけに学校に来ています。
「あれ?比呂士くん。また、仁王くんのフリしてるの?」
今朝もお布団の誘惑に打ち勝ち、愛しい彼を拝むため、学校へやって来ましたよ。
しかし、今日の彼はいつもと井出達が違う。
メガネが無い。
「いえ、練習中に割ってしまいましてね。予備は持ってきていないし。困りましたよ」
そう言って比呂士くんは笑った。
「ねぇ、比呂士くんて、視力どれくらいなの?はい。これ何本?」
私は右手でVサインを作ってみせる。
「2本です。流石にそれくらいは見えますよ」
そう言いながらも、比呂士くんは目を細めてじっと見ていた。
何だか、不機嫌そうにも見えるのに、口元が笑っているから可笑しなかんじだ。
「そもそも、目の悪い人ってどんな風に見えてるの?」
私は、生まれてこのかた、目の悪くなるようなことをしたことがない。(自慢になってない)
目の悪い人ならまわりにたくさんいたけど、急に気になった。
きっと、比呂士くんのことだから知りたくなるのね。(キャ!)
「どんな風にと言われましても……ぼやけて見えるとしか言い様がないのですが」
ぼやけて見える、と言われても実際に物がぼやけて見えた経験が無いのでイマイチよく分からない。
悩んでいたら、比呂士くんがくすっと笑った。(可愛い!!)
「やっぱり、面白いですね。さんは」
こんなかんじに、私と比呂士くんはなかなか仲良しなのです。
絶対、脈あるよね!!だって名前で呼んでくれるし!!
でも、あれです。
こんなに美しい世界でも、嫌なことっていうのはあるものなのです。
「ちょっとさん。来てもらえる?」
お昼休みに購買へパンを買いに行った帰りに、隣のクラスの白鳥麗華さんに呼ばれたのですよ。
彼女は何だかお嬢様!!ってかんじの名前のわりに上品で可愛らしいお方です。
たぶん立海で一番『清らかな女子』だと思う。
そう、ようするに比呂士くんの好みのタイプ、ストライクゾーンど真ん中なわけです。
長い黒髪からはフローラルの香りなんかが風に乗って漂ってきちゃったりなんかして。
で、連れてこられたのは物置と化している資料室。
さて、こんなところで何の用事でしょう。
「貴女、ちょっと調子に乗りすぎじゃなくて?」
ちょっと、お嬢さんキャラ変わりすぎですよ。
本当の白鳥さんは、その名に相応しい立派なお嬢様キャラだったようです。(貴女って漢字だよ!!)
「柳生くんには、貴女みたいな何考えているか分からない気持ちの悪い女は似合わないわ」
ああ、私ってキモイんだ。自分でもちょっと思ってたけど。
まあ、そんなわけで、資料室には白鳥さんの取巻き(なんか笑える)とかもいて、逃げられるわけもなく。
殴られたり、蹴られたり、髪切られたりとか、まあ、それはいいんだけど、焼きそばパン踏み潰したのだけはちょっとムカツクじゃない?
予鈴が鳴って、白鳥さんと取巻きさんたちが、実に清らかな笑顔をして資料室から出て行った。
座り込んでいた私は、白鳥さんに思いっきし足を引っ掛けてやった。(ざまぁみろ!)
転んで膝を押さえた白鳥さんは、何か言いたそうにこっちを見て顔を歪めたけど、本鈴が鳴って急いで資料室から出て行った。
髪の毛を集めて、ゴミ箱に入れて、潰れて原型を留めてない焼きそばパンの袋を開ける。
少し遅い昼食を食べよう。この哀れな焼きそばパンのためにも。
まあ、どのみち、こんな有様じゃあ、教室になんて戻れやしないけど。
こんなことがあっても、それでも、世界は美しいのです。
「さん!!」
廊下を歩く足音がどんどん近づいて、資料室の前で止まって、『ああ、ヤバイなー。先生に見つかったら怒られるなあ』って思っていたら、ガラガラって戸が開いて、比呂士くんの声がした。
「どうしたんですか!?その姿は…!」
「あ、メガネ無くても見えるんだ?比呂士くんこそ、何でこんなところへ?」
「先生に世界地図を持ってくるよう、頼まれたんです。そんなことより、問題はあなたです。購買から戻って来ないので、心配していたんですよ」
あら、比呂士くんが心配してくれるなんて。もう本当に、それだけで、私の目の前にはバラ色の世界が広がってるなんて、比呂士くんは知らないんだろうな。(知ってたら恥ずかし過ぎる!!)
「誰にやられたんですか……?」
「へ?」
「イジメにあってるんでしょう?」
「いや、ちょっと違うと思うよ」
イジメというより、何だろあれは?
「何が違うんですか!!」
考えてたら、比呂士くんが突然、怒ったように怒鳴った。
ああ、怒った比呂士くんもカッコイイなあ。なんて、ぼんやり思ってたら、比呂士くんがギュって!!ギュって!!(ダメよ!比呂士くんたら、そんな破廉恥な!!)
「私が、どれだけ心配したと思ってるんですか!?」
比呂士くんは目を細めて、睨むみたいに私を見た。
「比呂士くん…?」
睨むような目なのに、悲しそうな表情をするから、余計に悲しそうで。
何だか、私まで、悲しくなって、泣いてない人にもらい泣きしてしまった。
何を言っていいのか分からなくて、比呂士くんに責任感じてほしくなんてなかったから、何も言わなかったけど、比呂士くんは静かに、私の頭を撫でてくれた。
「あっ」
突然、比呂士くんが思いついたように声を上げた。
「涙で前がよく見えないときに似ています」
一瞬、なんのことだか分からなかったけど、すぐにわかった。
「こんなに、ぼやけてるの?」
涙が溜まった目では、ほとんど前なんて見えなくて、これじゃあ比呂士くんは、泣いたりしたら全然、見えないんだろう。
比呂士くんは泣かせちゃいけないなあ。
だって、こんなに美しい世界なのに、見えないなんて寂しすぎるじゃない。
私は泣くのをやめて、にっこり笑った。
比呂士くんは世界地図を右手に、左手で私の手を握っていた。
戸を開けた途端、比呂士くんは地図をその場に落として、顔を真っ赤にした。
戸の向こうにはクラスの皆と先生が聞き耳を立てていて、比呂士くんのリアクションに大笑いしてた。
私と比呂士くんも真っ赤になりながら、大笑いした。
そんなに可笑しなことじゃないのに。
嗚呼、世界はなんて美しいのでしょう!!
相変わらず、名前呼ぶとこ少ない。
もう、勢いで書いたからすっちゃかめっちゃか(死語)です。
テンション高いヒロインにしてみたんですが、これじゃあ、ただの阿呆ですね。比呂士ごめん。
書き始めてから、しばらく放置してたら、文字化けしててビビった。半角カタカナは危ないなあ。
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