しゃっくりと恋心
「ジャーーーーーーーーーーーーーーーック!!」
「へぶっしっ!!」
「…ヒックッ」
珍しく部活の無い放課後、帰る支度をしていたジャッカルをが襲った。
は教室に走りながら入ってきて、そのままジャッカルの首を後ろから肘で打った。
ジャッカルはこの世のものとは思えないような声を上げて、口から何か出しながらその場に倒れた。
その衝撃のシーンはよくある日常として、他のクラスメイトからは無視された。
「やっぱダメか……ヒックッ」
「、どうしたんだよ?」
「ブンちゃん助けて!!しゃっくりが止まんない!!」
「はあ?」
「なんか仁王が話しあるから、放課後教室来いって言うの!こんな状態じゃ行けないよ!!」
は涙目でそう言って、またヒックッとしゃっくりをした。
「あー、どうしよ!?どうしよ!?」
パニックを起こしているのか、はうつ伏せに倒れているジャッカルに跨って、その首を腕で絞めた。
あ、ジャッカル白目剥いてる。
「わあっ!!」
ジャッカルの首を絞め続けていたが急に声を上げる。
「ヒックッ」
「やはり、駄目か…」
気配を消して現れた柳はに背後から近づき、突然目隠しをしたのだった。
「驚いてしゃっくりが止まる確率3.24%」
一体、いつの間にこの教室に入ってきたのか。
「あーん、柳さま!!助けて!助けて!!」
ジャッカルの頭をボカボカ殴りながら、柳を見つめる。
当然、ジャッカルに意識は無い。
「残念だが、専門外だ」
そう冷ややかに言い放つ柳。ジャッカルを一瞥して、少し笑ったのが怖い。
「驚いただけで治る筈がないでしょう!」
教室の入り口で、いいかんじに逆光メガネを光らせる柳生。
その手には『家庭の医学』。
「しゃっくりとは横隔膜が痙攣を起こしているから、起こる現象なのです。横隔膜の痙攣を止めるのに驚かすなどという方法は適しません」
クイッと中指でメガネを押し上げて、語る柳生が、の目には神のように神々しく映っているのだろう。
は思わず両手を胸の前で組んで、柳生を見上げた。
「で、治す方法はあるのか柳生」
柳が冷静に問いかけてた。
「ありません」
「ええ!…ヒックッ…無いの!?」
は無意識にジャッカルの頭に爪を立てる。血が滲んだように見えたのが錯覚ならいいけど。
「あー、先輩いた!!」
そう言って、やってきたのは赤也だった。携帯電話を取り出して、どこかへ電話をかけ始めた。
「あ、仁王先輩!いましたよ、先輩!!」
赤也は場所を伝えると、電話を切った。
「あ…ヒッ…んた…」
「あれ?どうしたんスか、先輩?」
「ぶへっ!!」
次の瞬間、の右ストレートが赤也の頬にはいった。
「私、逃げるから…ヒックッ!!」
はそう言って、教室を出ようと、走った。気づくと他のクラスメイトはもう避難済みだった。
「ひゃっ」
出口にたどり着いたかと思うと、は立ち止まった。
「…ヒックッ…真田くん!?」
「ああ、。ちょうど良かった。お前に言おうと思ってたことがあるんだ」
真田はがっしりとの肩に手を置いた。
「ヒックッ…真田くん、悪いけど、私急いでるの!!」
「ん、どうしたしゃっくりか?丁度いい」
「は?」
「実はな。前からお前に惚れていたんだ」
は目を丸くして、固まった。
ふらりと体が揺れて、後ろに倒れる。
「おっと」
倒れるの身体を真田が支える。
いや。今の声は。
「おい!お前、仁王だろいっ!!」
「なんじゃ、もうバレてしもうたんか」
そうやって、仁王は器用に片手でマスクを剥がす。
「もよっぽど、びっくりしたんじゃろな。しゃっくり止まったぜよ」
「しゃっくりどうこうじゃなくて、気を失ってるようだが」
「何故、そのような格好をしてるのですか?仁王君くん」
「が、柳生だけじゃのーて、色んな人に変装したとこが見たいゆーからじゃよ」
仁王がを呼び出したのは、変装を見せる為だったらしい。
「しかし、もこのまんまじゃ、いかんき。王子様のキッスで起こしちゃろうかの」
そうして、仁王は顔をに近づける。
「ほう。仁王。貴様、俺の帽子を盗んでおきながら、さらに学校で破廉恥な行為をするつもりか?」
あと3センチのところで、仁王の後ろに現れた黒い影。
本物のエンペラー真田だった。
その声に反応したのか、が目を覚ます。
「いやーーーーーーー!!」
目覚めたばかりののエルボーが仁王の顔にヒットし、さらにその勢いで後ろに倒れた仁王の頭が真田の鼻に直撃する。
「へびゅらぁっ!!」
ジャッカルに負けず劣らず、とんでもない声を上げ、真田が倒れ、その上に仁王が重なる。
「きゃー!!仁王くん」
「あ、。しゃっくり止まってる」
こうして、のしゃっくりは無事止まりましたとさ。
めでたしめでたし。
「やあ、まさか、急にこんなに病室がにぎやかになるなんてね」
「すまん幸村。全てはジャッカルの責任なんだ」
「ピヨッ」
「そうなんスよ!」
「俺かよ……」
次の日、幸村の病室には真田、仁王、赤也、ジャッカルの四人が入院患者として、入れられたらしい。
ちゃんちゃん。
読んでくださった皆様すみませんでした。
私には仁王くんのことが全くと言っていいほど解りません。 |