愛に満たされた時を知りたかったの。
ほんの少しでいいから。
君と手を繋いで歩きたかったの。
やさしいてのひら
ジャッカルは友達だった。
一緒にいれば楽しかったし、悲しいときや辛いときには慰めてくれた。
ジャッカルはとても優しくて、でも、だからこそ、凄く狡い。
ジャッカルの笑顔は、いつだってあたしに対する牽制だった。
あたしとジャッカルは友達で、だからジャッカルが笑うとあたしは少し悲しくなる。
夏休みが終わって、あっという間に寒くなって。
暗い夜空に白い息が映える帰り道。
街灯は二人の影をアスファルトに映す。
「寒いね」と、あたしが言って、ジャッカルはマフラーに顔を埋めたまま同意した。
冬が来ると寂しくなる。
寂しくなって、優しくされると泣きたくなる。
欲しいのは優しさじゃなくて、温もりと愛情。
「ジャッカル、手繋ごう」
あたしの言葉に驚いて、ジャッカルは目を丸くする。
それから、そっと手を差し出して、あたしはその指先を握る。
ジャッカルは握り返してはくれなくて、手を繋ぐと言うより、あたしは迷子にならないよう必死に父親の手を掴む子供のようで。
ジャッカルの手はジャッカルと同じように優しくて。
泣きたくなりました。
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